北海道ツーリングを考えたとき、多くのライダーが最初に頭を悩ませるのが「どのフェリーで行くか」という問題ではないでしょうか。出発地・日程・予算・バイクの積み方――考慮すべきことは意外と多く、初めての北海道行きでは特に不安を感じやすいものです。この記事では、主要3航路の特徴と料金感、バイクの積載準備、乗船当日の流れまでをまとめて解説します。
北海道ツーリングにフェリーを使う理由
ライダーにとってフェリーが「最善解」である理由
本州から北海道へバイクで渡るルートは、実質的にフェリー一択です。青函トンネルはバイクの自走通行ができず、新幹線輸送も手間とコストがかかります。フェリーであればバイクをそのまま乗り込ませて、体は船室でゆっくり休めるという一石二鳥が成り立ちます。
特に40代以降のライダーにとって、フェリーの「移動中に疲れを抜ける」という点は非常に大きなメリットです。東京から苫小牧まで自走すれば最短でも丸2日かかりますが、フェリーなら乗船してしまえばあとは船が運んでくれます。北海道に着いたときに体力が残っている、これが長距離ツーリングの質を決定的に変えます。
フェリーを使う主なメリット
・体力を温存できる:乗船中に睡眠・入浴・食事が取れる
・荷物の制約が少ない:重い荷物をバイクに積んだまま乗り込める
・コスト効率がいい:宿泊費を節約しながら移動できる
・天候の影響を受けにくい:雨の中を何百キロも走らなくて済む
主要3航路を比較する
さんふらわあ(大洗〜苫小牧):関東ライダーの定番ルート
茨城県の大洗港を夜に出発し、翌朝苫小牧に到着する商船三井さんふらわあの航路は、関東・甲信越・東北南部からアクセスするライダーにとって最も使いやすいルートです。東名・常磐道を使えば首都圏からおよそ2〜3時間で大洗に到着できます。
「バイクパック」プランは、バイクの乗船料と個室またはカプセル寝台がセットになったプランで、繁忙期でも予約が取りやすい点が好評です。2等寝台と比べてやや割高ですが、40代以降のライダーであれば体への投資として個室を選ぶ方が多い印象です。
さんふらわあ 基本データ(2025年実績ベース・参考値)
・航路:大洗〜苫小牧(約18〜19時間)
・出発時刻:大洗 19:45発/苫小牧 13:30着(ダイヤは要確認)
・バイク料金目安:750cc以上で片道約15,000〜20,000円(繁忙期変動あり)
・個室料金目安:スタンダードシングルで約10,000〜15,000円
・おすすめ対象:関東・東北南部発のライダー
新日本海フェリー(舞鶴・敦賀〜小樽・苫小牧東):日本海ルートの王者
京阪神・北陸・東海からのライダーに支持されているのが新日本海フェリーです。舞鶴または敦賀を夜に出発し、小樽または苫小牧東に翌朝〜夕方に到着するルートで、船内設備の充実度は国内フェリーの中でもトップクラスと評されています。
バイク輸送プランは複数のグレードが用意されており、繁忙期の夏シーズンは人気が高く、3〜4ヶ月前の予約が必要になることもあります。レストランのメニューが充実していること、大浴場の広さも魅力の一つです。
新日本海フェリー 基本データ(参考値)
・航路①:舞鶴〜小樽(約20時間)
・航路②:敦賀〜苫小牧東(約40時間・ゆっくり派向け)
・バイク料金目安:750cc以上で片道約16,000〜22,000円
・個室料金目安:シングル洋室で約10,000〜20,000円
・おすすめ対象:関西・北陸・東海発のライダー
太平洋フェリー(名古屋〜苫小牧):東海・関西西側からの選択肢
名古屋を起点に仙台を経由して苫小牧へ向かう太平洋フェリーは、約40時間という長い船旅をゆっくり楽しみたいライダーに支持されています。「フェリーそのものを旅として楽しむ」という考え方に最も合致した航路とも言えます。
船内エンターテインメントや食事が充実しており、船上で過ごす時間を贅沢に使えるのが特徴です。東海・関西からのアクセスに加え、仙台で下船して東北ツーリングと組み合わせる使い方もできます。
太平洋フェリー 基本データ(参考値)
・航路:名古屋〜仙台〜苫小牧(約40時間)
・バイク料金目安:750cc以上で片道約17,000〜23,000円
・個室料金目安:シングル洋室で約12,000〜18,000円
・おすすめ対象:東海・関西発で長い船旅を楽しみたいライダー
航路選びの基準を整理する
出発地と目的地で絞り込む
フェリー選びの第一基準は「自宅から乗船港までの距離」です。どんなに船内設備が良くても、乗船港まで片道500km走るのは本末転倒です。
| 居住エリア | 第1候補 | 第2候補 |
|---|---|---|
| 関東・東北南部 | さんふらわあ(大洗) | 太平洋フェリー(仙台乗船も可) |
| 甲信越・北陸 | 新日本海フェリー(敦賀) | さんふらわあ(大洗) |
| 東海 | 太平洋フェリー(名古屋) | 新日本海フェリー(敦賀) |
| 関西 | 新日本海フェリー(舞鶴) | 太平洋フェリー(名古屋) |
| 中国・九州 | 新日本海フェリー(舞鶴) | 太平洋フェリー(名古屋) |
日程と予算のバランスを見る
北海道ツーリングにかかる総費用は、フェリー代(往復)・宿泊費・燃料費・食費を合わせると10泊前後で15〜25万円程度になることが多いです。フェリーの個室グレードを上げれば快適性は増しますが、その分宿泊費を節約することもできます。
繁忙期(7月後半〜8月)はフェリー料金が1.5〜2倍近くになる場合があります。できれば7月前半か9月に日程を調整できると、コスト・混雑の両面で有利です。6月の北海道は気温も安定しており、ライダーに人気の時期でもあります。
予約タイミングの注意点
・お盆・シルバーウィーク周辺は3〜4ヶ月前でも満席になることがある
・各社公式サイトで早割・WEB割を活用すると10〜20%程度安くなる場合がある
・キャンセル料は出航の14日前以降から発生することが多い(要確認)
・バイクの排気量によって料金区分が変わるため、自車のスペック確認を忘れずに
乗船前の準備:バイクと荷物の整え方
車両デッキでのバイク固定を理解する
フェリーの車両デッキでは、船会社のスタッフがタイダウンベルトを使ってバイクを固定します。基本的にはスタッフに任せれば問題ありませんが、自分のバイクの固定ポイントを事前に把握しておくと安心です。フレームやサブフレームに傷がつくことを気にする方は、固定ポイントにタオルや保護材を当ててもらうよう依頼するとよいでしょう。
バイク固定ベルト・タイダウンストラップを自分で持参する必要は基本的にありませんが、追加の固定に使いたい場合は申し出れば対応してもらえる場合もあります。乗船後の長距離移動では、揺れによってバイクに余計な負荷がかかることもあるため、積載した荷物が落下しないよう、乗船前に固定を確認することが大切です。
塩害対策と車両デッキの環境
フェリーの車両デッキは海上を長時間走ることから、塩分を含む海風にさらされ続けます。特に日本海ルートや夏場の長距離航路では、金属部分の錆が出やすい環境です。
乗船前にフレームやエキゾーストパイプ、チェーンなどの金属露出部分に防錆スプレーを吹いておくと、錆の進行を抑えられます。下船後は早めに水洗いや水拭きを行い、塩分を落とすことも忘れないでください。
荷物の積み方と持ち込みルール
フェリー乗船時の荷物は、基本的にバイクから降ろして客室に持ち込む必要があります。車両デッキに荷物を残したまま立ち入ることは原則できません。そのため、「バイクから素早く取り外せる荷物構成」にしておくことが重要です。
ツーリングサイドバッグはバックルやベルクロで素早く着脱できるタイプが向いています。荷物の取り外しに手間取ると、後続車両の迷惑になることもあります。前日のうちに「船内で必要なもの」を一つのバッグにまとめておくと当日がスムーズです。
船内持ち込み荷物のチェックリスト
・着替え・洗面用具:大浴場が使えることが多い
・貴重品・財布・スマートフォン:車両デッキには戻れない
・シングル個室の寝具:フェリーによってはセット販売あり(購入or持参)
・薬・耳栓・アイマスク:エンジン音・波の音が気になる方は準備を
・翌日の天気予報確認用タブレット・PC:Wi-Fiは有料または不安定な場合あり
乗船当日の流れ:慌てないために
乗船手続きのタイムライン
フェリーの乗船は、飛行機よりもずっとゆったりした流れですが、バイクは徒歩・車とは手続きが異なる部分があります。出港の1時間〜1時間30分前には港に着いておくのが基本です。繁忙期はさらに余裕を持って行動することをお勧めします。
| 時間目安 | やること |
|---|---|
| 出港90分前 | フェリーターミナル到着・駐車エリアでの待機 |
| 出港60〜75分前 | チェックイン窓口で乗船券受け取り・車検証提示 |
| 出港45〜60分前 | 乗船開始(バイクは早めに呼ばれることが多い) |
| 乗船後すぐ | 荷物を車両デッキから取り出し・客室へ移動 |
| 出港後 | 大浴場・夕食・就寝など自由行動 |
下船後すぐ走り出すための準備
苫小牧や小樽に着いたら、多くのライダーがすぐに走り始めます。下船してバイクのエンジンをかける前に、タイヤの空気圧・荷物の固定・燃料残量を必ず確認してください。長時間停止していたバイクは、タイヤの空気圧が若干変化していることがあります。
苫小牧東港はターミナルから市街地まで距離があります。小樽港は市街地に近く、下船後すぐにコンビニや給油所にアクセスしやすいため、港選びの際の参考にしてください。
個室と寝台の選び方
シングル個室を選ぶべき理由
かつてのフェリー旅は雑魚寝の大部屋が主流でしたが、現在の主要フェリーはシングル個室やコンパートメント型の個室が充実しています。40代以降のライダーにとって、翌日の走りのために睡眠の質を確保することは旅の成否に関わる問題です。
シングル個室は鍵がかかり、荷物を安心して置けるほか、就寝・起床のタイミングを自分でコントロールできます。長距離フェリーでは「シングル個室寝具セット」をオプションで追加できる場合もあり、枕・毛布・シーツがセットになっています。船のベッドは薄い場合があるため、敏感な方は薄手のトラベルブランケットを持参するのも手です。
客室タイプ比較(一般的な目安)
・2等(雑魚寝):最安値。繁忙期は混雑し睡眠の質が落ちやすい
・2等寝台(カプセル型):プライバシーはやや確保。料金は中程度
・シングル個室(洋室):鍵あり・テーブルあり。コンセント付きが多い
・スイート・デラックス:窓付き・ソファあり。ゆとりを重視する方に
フェリー旅をもっと快適にする工夫
乗船中の時間の使い方
さんふらわあで約18時間、太平洋フェリー名古屋便で約40時間と、フェリーの乗船時間は長いようで、慣れると意外と充実した時間になります。
先輩ライダーの一言として、こんな声をよく聞きます。「最初はスマホばかり触っていたけど、今は船上で北海道のルートを手帳に書き込むのが楽しみになった。あの時間が旅の一部なんだよね」。フェリーの乗船時間は、北海道でのルートを考え直す絶好のタイミングでもあります。
乗船中にできることとして参考にしてください。
・大浴場でツーリングの疲れを癒す
・レストランで地のものを使った食事を楽しむ
・デッキで海を見ながら気分転換
・翌日以降のルートや宿をオフラインで確認・修正
・持参した本や映画を楽しむ(Wi-Fiは不安定なことも多い)
帰りのフェリー予約を先に取る
北海道に渡ることに夢中になって、帰りのフェリーを後回しにするライダーは少なくありません。しかし繁忙期の帰路便は、往路以上に埋まりが早い傾向があります。8月上旬に北海道入りするなら、帰路の8月中旬〜下旬のフェリーは渡航前に予約しておくことを強くお勧めします。
帰りの日程がある程度決まっていれば、北海道内での走り方も計画しやすくなります。「最終日に苫小牧に向かうルートを意識して走る」という逆算の考え方が、北海道ツーリングの計画をスムーズにします。
フェリー予約でよくある失敗
・バイクの排気量を誤って申告してしまい、当日追加料金が発生した
・乗り遅れ:ガソリン補給や渋滞で出港に間に合わなかった(返金不可の場合あり)
・帰りの予約を取り忘れて、希望日の船に乗れなかった
・大型荷物の持ち込みルールを確認せず、デッキに置いてきてしまった
よくある質問
フェリーのバイク料金はどの排気量から高くなりますか?
各フェリー会社によって区分は異なりますが、一般的には125cc以下・126〜750cc・751cc以上の3区分、または400cc・750ccを境にした区分が多いです。大型バイク(750cc超)は中型より2,000〜5,000円程度高くなるケースが多く、排気量の確認は予約前に行ってください。詳細は各社の公式予約サイトで確認できます。
フェリー乗船中にバイクに戻ることはできますか?
乗船中の車両甲板への立ち入りは、安全上の理由から原則禁止されています。必要な荷物(貴重品・着替え・充電器など)は乗船前に必ずすべて取り出し、客室に持ち込んでください。バイク本体の固定は乗組員が行うため、ライダー側の作業は基本的に不要です。
まとめ|フェリーを使いこなして北海道ツーリングを快適に
北海道ツーリングのフェリー選びは、出発地・日程・予算のバランスで決まります。体力に余裕があるなら長距離航路でゆっくり移動、限られた日数で走りたいなら短距離航路で現地の時間を最大化、という判断が基本です。
どの航路を選んでも、予約は早割・早期予約の活用で大きく費用を抑えられます。繁忙期は満席になることも多いので、日程が決まったら早めに押さえておきましょう。
